アメリカ経済はもはや底を打った可能性が高い

各所へ波及した金融危機

 サブプライムローン問題から始まった今回の金融危機。影響は、金融派生商品市場全体のスプレッドが広がるなど広範にわたり、カウンターパーティーリスクなどもささやかれ、市場はより一層のプレミアムを支払うこととなった。一部問題化されたCDSなどのデリバティブ取引に関しては、システミック・リスクやカウンターパーティーリスクが過小評価されていたこと*1や、会計上の取り扱いについて、新たな改善点がピックアップされた。
 金融危機の影響で破産した主要な企業は、ベア・スターンズフレディマックファニーメイリーマン・ブラザーズ、ワシントン・ミューチャルといった面々。

すばやい対策

 これら一連の金融危機を立て直すため、FRBは伝統的な金融緩和手法を総動員して量的緩和に努め、ベア・スターンズやAIGに対しては巨額の緊急融資を行い、政府は、自動車BIG3やシティーグループに対して公的資金を投入、SEC(米証券取引委員会)はLCHクリアネットにCDS取引の清算・決済サービスの提供を暫定的に許可するなどした。
 民間の取り組みとしては、CMEやNYSEなどは、CDS取引の清算・決済サービスを開始する動きを見せている。
 特に、2008年8月にベア・スターンズの危機が伝えられてからの対応は目覚しいものがあった。

現状

 これら一連の対策は功奏した。
 カウンターパーティーリスクはベア・スターンズの破綻以前の水準に下がっている。
The CDR Counterparty Risk Index
 CDSのコストを示す「LCDX.NA.10」指数は、去年12月を底として落ち着きを見せている。

 CDS取引を、投機対象として扱い、過剰なレバレッジをかけていた集団は確かに存在しただろう。しかし、CDSは元はリスクヘッジの手段であって、世界的な金融リスクの高まりは、これら金融デリバティブの手法によって、すばやい回復を見るだろうと予測する。事実CDSの想定元本は2007年末の62兆ドルから2008年6月末には54兆ドルヘと減少している。ディーラーから取引情報を集め、リスクをつなぎ合わせて解約するといった作業を行うTriOptima社は、同期間中17兆ドルの解約を行ったとしており、単純にこれらの数字から計算すれば新規に10兆ドルほどのCDSが成立していることを示していて、今回の金融危機以後、特に活発にデリバティブ取引が行われている様子がわかる。

 過去の例を見ても、1930年代を除けば、金融危機は比較的短期間で回復している。
 個人消費の落ち込みという大きな問題は依然存在するものの、不動産市況さえ回復してしまえばこちらもすぐに回復することだろう。不動産ローン金利は過去半年間で1%以上下がっており、不動産市況が回復するのも時間の問題であると思う。しかも、世界主要各国は協調して、財政を大幅に拡大させており、個人消費の落ち込みを適切にカバーしようとしている。

総括して今後を予測する

 これらの取り組みを見ると、今回の金融危機は去年の12月はじめにもはや底を打っている可能性が高い。
 金融危機とは歴史的に、高まったレバレッジを調整するという意味合いがある。今回の場合、高いレバレッジとは不動産価格や低貯蓄率という数字を意味している。アメリカ国民はドルの減価によって、中期的(2-3年)にはこれまでほどの消費を維持することは不可能になると思う。しかし、同時に証券市場といった金融市場は今年中には、2008年8月以前の水準を回復することになるだろうと予測する。

*1:実際に破綻企業の清算処理を行ってみて、金融機関がうまくリスクをヘッジしていたために、当初見込まれていたよりもはるかに影響は小さかったものの