派遣は悪?

 求職中の人間は、テストでいいからとにかく雇ってみて欲しいと思っている。逆に、職を持っている人間は、長く働くことを願っている。それは、正社員だろうが派遣社員だろうが大抵違いはない。

 派遣切りを問題化する人間は、派遣切りされた人間を社会的弱者だと思うから、なんとか助けてあげたいと思って問題化する。しかし裏側を見れば、求職中(失業中)の人間もたくさんいるし、こちらも同様に社会的弱者だ。

派遣で働くの3つのメリット

 企業が大きな受注を獲得して、とにかく人手が欲しいと考えたとしても、それが長期的に続く保障はない。しかし1度雇ってしまえば解雇が難しい。このことが足かせとなって、採用が慎重になる。経済が好調となった2005−2007年にかけて、長時間の残業が社会問題になったのも、日本の正社員制度と切り離して考えることはできないだろう。

再チャレンジという視点

 人材不足に陥った企業は、派遣社員を活用した。子会社に系列の派遣会社を抱える大企業もたくさんある。紹介予定派遣として、正社員のルートを用意された求人も多く見かけることができる。こうした求人は、たとえ派遣であっても倍率は高い。しかも以前は、1度新卒で大企業へのルートを逃してしまった場合には、もう2度と大企業で働くことはできなかった。派遣であれば、高卒であっても業務経験がそれなりなら、大企業で働くことが可能となる。働きがよければ正社員への道もありうるというものだ。派遣という制度によって、再チャレンジをすることができるようになったわけだ。再チャレンジという単語を使ったのは誰が最初だったろうか?
 派遣を禁止するということは、これらの企業の採用活動を硬化させ、再チャレンジが非常に困難になることを意味する。

就職→退職→就職

 2点目のメリットとしては、職能給がだいたい定まるということだ。労働市場を流動化してみて、現在では”この職能でこの地域ならこの値段”といった相場のようなものが形成されつつある。職能給が定まれば、仮に職を失ったとしても、それまでとそれほど違わない待遇で職を見つけることができるようになる。子育てが終わった女性の社会参加も容易になった。また3点目、ただ長く勤めているというだけで、高い給料を保証されているノンワーキングリッチを減らすことができ、企業側にしてみれば人件費の適正化に役立つことだろう。

最後に

 派遣切りを悪だというのは簡単だが、労働市場の流動化のメリットも忘れてはならない。派遣=悪という意見は、ニュースに惑わされて問題を1面的にしか見ていないように思える。
 派遣のデメリットによって失業した人が、もっとも早く問題(=無職)を解決できるのは、派遣を利用することではないだろうか?

補足

 派遣切りをやめて、求職中の人もみんな雇ってやればいい。こういう主張をする人も結構存在する。理想的には確かにその通りだ。しかしこの主張は、雇用という社会保障の負担を企業に押し付けているだけで、社会的にはネガティブに作用することになる。失われた10年、大企業が2002年に、早期退職を求めるなどの大量解雇をするまで、長期化した不況は解決の兆しを見せなかったことを忘れてはならない。企業は膨大な人件費を捻出できずに、社会には停滞感が漂った。
 「長期雇用をしたほうが、企業は成長する」という意見もある。確かにその通りかもしれない。それはきっと、10年20年たってみて結論がでる。なにも、その成長する企業がトヨタキヤノンである必要はないのではないか?こうした企業が嫌いなら、なおさら助言しなければいいだけのことではないか。